アスベスト(石綿)を吸うことで発症する可能性のある病気と、その症状についてご紹介します。
中皮とは、胸膜、心膜、腹膜など表面を覆う薄い細胞層のことで、中皮腫は、この中皮細胞から発生する悪性の腫瘍です。
発生する部位によって、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫、精巣漿膜中皮腫に分類され、約9割前後が胸膜中皮腫とされています。
主な発症原因はアスベスト(石綿)の吸入です。症状としては、咳、胸の痛み、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感、原因不明の発熱や体重減少などです。
平均潜伏期間は40~50年。20年以下での発症例は非常に少なく、10年未満での発症例はありません。
アスベストが多く使われていた1970年代~80年代からの経過を考慮すると、日本では今後発症者が増加すると見られています。
中皮腫は診断が困難なため、臨床経過やエックス線検査・CT検査のほか、病理組織診断による確定診断が不可欠です。
上皮型、肉腫型、二相型、特殊型に分けられ、中皮腫がどの範囲まで浸潤しているのかによって病期(ステージ)がⅠからⅣまで分類されています。
治療は、中皮腫のステージ、年齢、他の疾患の有無などを総合的に判断し、手術、抗がん剤、放射線療法、緩和ケアを組み合わせて行われます。
中でも上皮様胸膜中皮腫は胸膜切除などの手術や、薬による治療により、長期の生存が期待されるようになってきました。
腹膜中皮腫についても、腹膜切除術と術中腹腔内温熱化学療法により、予後が改善されてきています。
中皮腫の治療にあたっては、「労働者災害補償保険(労災保険)」や「石綿健康被害救済制度」などで治療費等が給付されます。
仕事でアスベストを扱って中皮腫を発症した場合には、労災保険から休業補償等の給付も受けられます。
国からの給付金、もしくは賠償金の対象になると、1,150万円が、死亡している場合は1,200~1,300万円が支払われます。
原発性肺がんは、気管支あるいは肺胞を覆う上皮に発生する悪性の腫瘍のことです。
咳、痰、血痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさ、発熱などの症状がよくみられますが、がんができた場所や大きさによってはほとんど症状が出ず、検査などによって発見される場合もあります。
肺がん(原発性肺がん)は、アスベストだけでなく、喫煙などさまざまな原因で発症します。
アスベストばく露から肺がん発症までの潜伏期間は15~40年程度で、アスベストの累積ばく露量が多いほど肺がんになる危険が高いことが知られています。
肺がんを診断するためには、まず胸部エックス線写真と胸部CTを撮影し、その上で、病理診断を行い判断します。
肺内の変化がわずかで、主に胸腔(きょうくう)に胸水がたまる形の肺がんの場合は、胸腔鏡による組織の生検や、胸水穿刺による細胞の採取(細胞診)で病理検査が行われる場合もあります。
アスベストが原因の肺がんであることの判断基準としては、「胸膜肥厚斑(胸膜プラーク)」の有無がポイントです。
アスベストにばく露した人に起きる特有の良性疾患で、労災認定等を判定する際にとても重要になります。
外科療法、放射線療法、薬物療法、支持療法(緩和ケアを含む)があります。
最近の薬物療法は、副作用に配慮したものが増えており、外来通院しながら治療を受ける人も少なくありません。
放射線治療では、定位放射線療法や重粒子線治療なども行われるようになってきています。
肺がん(原発性肺がん)の治療についても、「労働者災害補償保険(労災保険)」や「石綿健康被害救済制度」などで治療費等が給付されます。
仕事でアスベストを扱って肺がん(原発性肺がん)になり、仕事を休んで療養する場合は、労災保険から休業補償等の給付も受けられます。
国からの給付金、もしくは賠償金の対象になると、1,150万円が、死亡している場合は1,200~1,300万円が支払われます。
原発性肺がんと診断された人の中には、タバコが原因で発症したと思っている人が少なくありません。
しかし、タバコを吸わない人にも肺がんが発症することがあり、肺がんの原因はさまざまです。
そのうちの一つがアスベスト。仕事で扱ったことがある・家の近くにアスベストの工場があった・家や学校、職場などにアスベストの吹きつけがあった、などの理由で、がんを発症する人が多くいます。
肺がんの原因を医学的に判断する最も簡単な方法は、胸部CT検査の画像診断です。
アスベスト(石綿)との関連性が医学的に認められると、公的な補償を受けて、治療や療養ができる場合があります。
「私の肺がんはアスベストが原因では?」とお考えの方は、ぜひアスベスト診断の専門家に相談してみましょう。
びまん性胸膜肥厚は、肺を包む胸膜(きょうまく)が線維化し厚くなる病気です。
肺の表面が厚くなると、硬くなり膨らまなくなります。それによって呼吸機能が低下し、呼吸困難などを引き起こすのです。
坂道での息切れに始まり、平地での歩行が遅くなり、100メートル歩いただけでも息切れが起こります。
重症化すると、苦しくて着替えすらできなくなり、常時酸素吸入が必要になります。また、胸の痛みや、肺炎などの呼吸器感染が起こることもあります。
胸膜の線維化は、片方の肺だけに起こることもありますし、両方の肺に起こることもあります。
一部分だけに起こるのではなく、徐々に全体へ広がっていく点が特徴です。
感染症や膠原病など病気の原因はさまざまですが、そのうちの一つがアスベスト(石綿)の吸引です。
潜伏期間は高濃度ばく露群で30年、それよりも少し低い群で40年と報告されています。
診断の際は、胸部エックス線画像(正面像)で、側胸部のびまん性(非限局性)の肥厚像の広がりが頭尾方向に、片側の場合は胸部エックス線画像で側胸壁の1/2以上、両側の場合は側胸壁の1/4以上がひとつの目安となります。
ほとんどの例で肋横角の消失がみられます。
胸部CT画像では胸膜プラークも見つかることが多く、胸部CT画像は診断と鑑別に欠かせません。
現在のところ特別な治療法はありません。徐々に呼吸機能障害が進行し、慢性呼吸不全になった場合には在宅酸素療法(HOT)等を行います。
びまん性胸膜肥厚の治療についても、「労働者災害補償保険(労災保険)」や「石綿健康被害救済制度」などで治療費等が給付されます。
仕事でアスベストを扱ってびまん性胸膜肥厚になり、仕事を休んで療養する場合は、労災保険から休業補償等の給付も受けられます。
国からの給付金、もしくは賠償金の対象になると、1,150万円が、死亡している場合は1,200~1,300万円が支払われます。
肺が線維化してしまう、肺線維症(じん肺)という病気の一つです。肺線維症(じん肺)は、アスベスト(石綿)のほか、粉じん、薬品等を多く吸い込むことが原因とされますが、中でもアスベスト(石綿)のばく露によっておきた肺線維症を、とくに石綿肺と呼んで区別しています。
吸い込んだアスベストの量が多いほど肺の繊維化が起きやすいことが分かっています。
職場などでアスベスト粉塵を10年以上吸入した労働者に起こるとされており、潜伏期間は15~20年ほど。
初期症状は息切れ、咳、痰で、症状が進行すると重度の息切れや呼吸不全が現れます。
また、肺結核、肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支拡張症、気胸などの合併症が起こる可能性もあります。
石綿肺は、胸部エックス線検査・CT検査での所見と、大量の石綿ばく露歴によって診断されます。
重喫煙者によく見られる、気腫合併肺線維症との鑑別が必要です。
軽度の石綿肺の診断には胸部CT検査が有用なことがありますが、一時点だけの画像のみで石綿肺と診断することはできません。
軽度の石綿肺が2~5年で急激に悪化することはなく、経過を追って画像を比較検討することにより、特発性間質性肺炎等との鑑別が可能になる場合があります。
治療法は、喀痰、咳に対する薬物療法、呼吸困難などに対する在宅酸素療法(HOT)など、対症療法のみです。ステロイド療法は効果がありません。
石綿肺の治療についても、「労働者災害補償保険(労災保険)」や「石綿健康被害救済制度」などで給付金が支給されます。
仕事でアスベストを扱って石綿肺になり、仕事を休んで療養する場合は、労災保険から休業補償等の給付も受けられます。
国からの給付金、もしくは賠償金の対象になると、550~1,150万円が、死亡している場合は1,200~1,300万円が支払われます。
良性石綿胸水は、肺の外側と肋骨の内側などを包む膜に炎症が生じ、胸水が溜まる病気です。
アスベスト以外にも、悪性腫瘍などさまざまな原因で発症します。
多くは無症状で、胸水がなくなれば治癒しますが、呼吸困難や胸の痛みといった自覚症状がある人もいます。
また、まれに胸水が引かずに被包化され、呼吸機能障害が残る場合があります。
アスベスト(石綿)の吸引から15年以内で発症することもありますが、平均潜伏期間は40年程度です。
悪性腫瘍や結核など、ほかに胸水の原因となる病気が見当たらず、石綿ばく露歴があること、胸部エックス線検査や胸腔穿刺などで胸水が証明されることによって診断されます。
確定診断には他の原因を除外する必要があるため、胸水の性状・生化学検査、細胞診等の検査が欠かせません。
穿刺ができない程度にまで胸水が減少する前に調べる必要があります。
治療としては、ステロイドが有効な場合もありますが、治療方法として確立されたものはありません。
そのため、胸水が減少しないときには、持続ドレナージが必要なこともあります。
良性石綿胸水の治療についても、「労働者災害補償保険(労災保険)」で給付金が支給されます。
仕事でアスベストを扱って良性石綿胸水になり、仕事を休んで療養する場合は、労災保険から休業補償等の給付も受けられます。ただし、石綿健康被害救済法による救済の対象にはならないので要注意です。
国からの給付金の対象になると、1,150万円が、死亡している場合は1,200~1,300万円が支払われます。
アスベスト(石綿)を吸ったことで起こる症状に、以下の症状があります。
中皮腫 | 咳、胸の痛み、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感、原因不明の発熱や体重減少など |
---|---|
原発性肺がん | 咳、痰、血痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさ、発熱など |
びまん性胸膜肥厚 | 呼吸機能の低下し、呼吸困難、胸の痛み、肺炎などの呼吸器感染 |
石綿肺 | 息切れ、咳、痰、重度の息切れや呼吸不全 |
良性石綿胸水 | 呼吸困難や胸の痛み |
症状はさまざまであり、明らかな不調を伴うものもあれば、自覚症状がない場合もあります。アスベスト(石綿)による症状かも?と心配になった方は、早めに医療機関で検査してもらいましょう。
アスベストの特徴は、熱、摩擦、酸やアルカリに強く、丈夫で変化しにくいことです。
建築材としては非常に優秀ですが、簡単に劣化・分解しないため、人体に取り込まれると、長期間にわたりそのまま肺に残ってしまいます。
体内にとどまり続けるアスベストが少しずつ粘膜を傷つけ、病気を引き起こす原因となるため、発症まで時間がかかるのです。
アスベストの診断なら、各エリアの労災病院に行くのが一番です。
アスベスト(石綿)は、0.02μm(1㎜の50,000分の1)という極めて小さな粒子です。このため、研磨機、切断機を使用して加工したり、吹付け石綿を除去したりする際に所要の措置を行わないと、空気中に飛散・浮遊して人が吸入してしまうのです。
また以前は、アスベストの危険性が知られていなかったため、必要な措置が行われず、大量に吸入し健康被害に悩まされている人が多くいます。
アスベスト(石綿)は、人体にいったん取り込まれると肺胞に沈着し、その一部は肺の組織内に長期間滞留します。
この肺に滞留したアスベスト(石綿)の刺激によって、石綿肺、中皮腫、肺がんなどの病気が引き起こされると考えられています。
当サイトは、Zenken「アスサクラ」編集チームが厚生労働省などのわかりにくい情報を、わかりやすくお届けしようと制作しています。
アスベストに関わる疾患を調べていて感じたのは、診断を受けていない人はまず病院へいくことが大切だということです。アスベスト由来かどうか今の病院では診断してもらえない、という場合は近隣の労災病院のアスベスト疾患センター等の専門医療機関に行ってみてください。
ただ、今もう体を動かすのが厳しいような方もいらっしゃるかもしれません。
そんな時に、ゴールが見えないまま行動してしまうと、疲弊するだけになってしまいます。やはり、ここは専門家である弁護士の力を活用するのがおすすめです。
まずは無料相談で話を聞いてみて、納得できたらお願いする、納得できなかったら自身で行う(または違うところに相談してみる)でいいので、第一歩を踏み出してみませんか。
当サイトの記事確認など、取材に協力していただいたのはFAST法律事務所。
「法律事務所を利用したことが無いので不安」という方でも、安心できるように、「町のお医者さん」のように相談頂ける環境を目指している法律事務所です。
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ぜひ気軽にお問い合わせください。